「東京へ」のエントリでフェリーに乗船してはや二ヶ月。
ブログ主はいつになったら東京に着くんだとヤキモキしていた方がいたらゴメンナサイ(いないと思うけど)。20時間ほどの船旅の末、翌日にはしっかり帰ってきております。
■2006.8.29 さんふらわあ・みと(苫小牧→大洗)船上にて
20時間の船旅というのはけっこうヒマを持て余すもので、そのくらいで読み切れる厚めの文庫本にお供してもらっています。今回は冲方丁『マルドゥック・スクランブル』全三巻。これだけあれば行きだけじゃなく帰りまでつきあえるはずです。
狙い通り、帰りの船内で、物語後半のほとんどを費やす怒濤のカジノシーンを一気に読み切れました。『カウボーイビバップ』第3話のデータが埋め込まれた賭けチップと設定がかぶるけど、あそこまでやれば、パクリと文句はいわれないでしょう。
さて、この『マルドゥック・スクランブル』において、いちばん魅力的な存在といえば、ウフコック(煮え切らない)という名の、人語をしゃべるネズミ型万能兵器と決めつけても異論は少ないと思われます。普段は金色の毛並みのネズミなのですが、使い手の要求によって銃器やシールドにターン(変身)するウフコック。名は体を表すという言葉通りに、ウフコックが使い手の少女にみせる態度の煮え切らなさは、多くの読み手を悶えさせたことでしょう。
僕も悶えた(笑) ネズミ萌え。
▲今は亡き我が家のウフコック様。ツメがラブリィな彼の本名はマンセル。
実際、数年前までスナネズミと一緒に暮らしていたのですが、どうして自分はネズミが好きなんだろう?と船に揺られながら改めて考えてみて
「もしかしたら幼い日に大好きだった『トムとジェリー』の影響じゃねぇ?」
と思い当たりました。——そういえば猫も好きです、犬より。
とすると、僕は現実の猫やネズミよりも先に、アニメの猫やネズミと出会って好きになったということですね。こう思った瞬間に——人間の連想記憶とはなかなか優れたもので——何年も聴いていなかった曲の一節が脳内で再生されたのです。
♪生まれて初めて見るものはいつでも テレビからで…
ああ、スパンクハッピーの『チョコレート・フォークソング』だ!
やばい、いますぐ、この瞬間に聴き返したい!
しかし……ここは自分の部屋じゃなく太平洋上の船のなか。
なんとかしてよドラえも〜ん!
……と。いや、ドラえもんを呼ぶまでもなく、あるじゃないか、
いくら詰めこんでも大きさも重さも変わらない音楽の四次元ポケットが!
(ジャーン) あ い ぽ っ ど〜
リュックの中の60G iPodの存在を思いだして、
僕はすぐさま取り出しクリックホイールを回したのでした。
「自分の持ってるCD全てを軽々とポケットに入れて、いつでもどこでも」
そんなiPodのコンセプトを、
これでもかというくらい鮮やかに実感させられました。
次は「自分の本棚をポケットに入れて、いつでもどこでも」という未来を!
僕が生きているうちに……と狂おしいまでに激しく希望!
Googleあたりが「図書館をサーチして端末に呼び出す」という形で実現しそうだけど、船の上って携帯電波も圏外なんですよね(汗)
今回は「容れ物」という伝統的思想を進化させたiPodならではの活躍でした。
そういう読書端末が欲しいと海の中心でワガママを叫んでみます。