ボーカロイドは体外受精の夢を見るか
最近やたらと話題に取り上げております「初音ミク」「鏡音リン・レン」ですが、「いまさら聞けない基本知識」的に説明すると、メロディーと歌詞を入力することで人の声を元にした歌声を合成することができるソフトです。
機械に人間みたいに歌わせられるってことで、つまり「楽器」のひとつなわけですが、それがキャラクターとして人格をもったことで、あたかも「歌手」であるかのような共同幻想をかもしだし、結果として年末の「初音ミク着うた配信JASRAC登録問題」に発展したのではないかと僕は考えます。
初音ミクを「楽器として使って曲を作る」ことにはなんの問題もないんですが、「キャラクターとしての初音ミク名義で」曲を配信しようと登録したことが問題になってくる、というややこしさですね。
ワープロソフトに例えれば、Wordで書いた小説にWordの開発者やマイクロソフトが権利を主張できないのはわかるんだけど、初音ミクだって「楽器」だから、ミクで制作した音楽についてクリプトンが権利主張するのもおかしいんじゃない?と問われても、なんとなくしっくりこないのはどうしてなんでしょうね。
そして開発元のクリプトンやニコニコユーザが、
ミクを「育てた」と表現するとしっくりくるのはどうしてなんでしょう?
僕には配信問題の決着より、この、初音ミクをめぐって自分のなかに呼び覚まされる「ざわざわ落ち着かない感覚」のほうが興味深かったです。SF好きの血が騒ぐんですよ。
コンピュータが意識をもつ、というテーマはよくSFのネタにされますが、コンピュータの性能が上がって知識の集積度がある臨界に達したときに意識が生じる……なんていう古典的帰結より、初音ミクのように「楽器」が共同幻想として「人格」を発生させることで「意識が肉体の外にある生命」が誕生する……なんてアイデアのほうがはるかに魅力的です。
悪名高きコピーアットワンスが、自己同一性を機械に意識させるきっかけになって機械生命が誕生するとか ←一時この考え方、僕の中でマイブームだったんですけど(笑)、そういうSF的妄想をするのが好きなんです。
「認めたくないものだな。
理屈で取り繕うほどに、みっくみくにされてる自分を……」
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