2000年にテレビ東京の深夜帯で放映されていた、どのジャンルに分類すればいいのか困惑してしまうようなイカれたショート・ムービーのオモチャ箱的番組、
『バミリオン・プレジャー・ナイト 』
僕とほぼ同年代のクリエイター・石橋義正氏のあやなす奇妙な映像に、警戒感を剥ぎ取られたままどっぷりとハマってしまった日々を、いまも鮮烈に覚えている。
DVDは、もちろん5巻すべて購入してしまった。
バミリオン・プレジャー・ナイト(以下VPNと表記)は知らなくても、その1コーナーだった、動かないマネキンによるアメリカン・ホームドラマ「フーコン・ファミリー」は、のちに『オー! マイキー 』シリーズとして放映され、(現在、新シリーズ放映中)ひそかな人気を博していたので、記憶に引っかかる方がいると思う。あの微妙な違和感と乾燥した笑いのセンスは、まぎれもない石橋監督の資質の現れだ。
さて、なぜ今ごろになってVPNなのかというと、僕が担当するゼミの学生に「映像を文章で描写する訓練」を課そうと考えたときに、記憶の中からヒットした最高の適役がVPNの1コーナーとして放映された『クイック・ガール』(DVD Vol.4に収録。Web配信はこちらのVol.6)だったからだ。
17分間の映像作品『クイック・ガール』の登場人物は、殺し屋の若い女が4人。
セリフはほとんど皆無。
彼女たちのバックに何が存在し、何を目的として殺人を行うのかも不明。
この素材から、文章を作れ。
それが僕の課したトレーニングだ。
文章による安直な写生なら、ハードボイルド小説になるだろう。それも良い。
パロディやサイドストーリーをふくらませてもいい。
映像は神(カメラ)の視点の三人称だが、
4人の女のうちの一人に絞って、彼女の一人称で世界を見直してもいい。
あるスタイルとか、登場人物の感情(猜疑心や恐怖)だけをサンプリングして
リミックス・バージョンをトラックダウンしてもいい。
何も語られない作品だけに、自由だ。
だが、
学生たちには、制約のなさが制約になるかもしれない。
さらに『クイック・ガール』はラストに仕掛けがあって——
(以下ネタバレにつき、文字色を白にしています。読んでもかまわない方は、Macならコマンド+A WindowsならCtrl+Aで反転表示させてください)
突然画面が停止し「ここで問題です。4人のうち一番最初に殺されたのは誰だったでしょう?」と司会者の高らかな声で問われ、いままでのスタイリッシュな映像が、安っぽいクイズ番組のセットの中で、問題を見せるモニタの中に押し込まれてしまう。解答者席にいる4人の女性は、名前も服装もメイクも違うが、殺し屋の4人と同じ女優さんだ。そして、彼女たちは皆、自分が演じた役が一番最初に死んだと解答のフリップに書き入れる。
「正解はマリーです」マリーであり正解の解答者でもある女は、ハワイ旅行を獲得して喜び、はしゃぎまくる。祝福のなか、いつの間にか彼女の手に銃が握られていて、笑いながらスタジオにいる人間を撃ちはじめる。全員を倒してガッツポーズをキメる彼女にエンドタイトルが重なる。
ちゃんと見ていると判るが、最初に死んだのはマリーではない。4人による殺しの循環になっていて、一番最後に死んだ女を殺した女が一番最初に死んだことになってしまう。このような矛盾をはらんだ展開になっていて、最初に死んだ女も最後に死んだ女も存在しないのだ。
ゼミの学生がこの『クイック・ガール』からどんな部分を切り取り、どんな料理をしてくれるかすごく楽しみにしている。
出題した僕自身がリミックスするならば、「女たちが、一番最初に死んだのは自分だと信じた」という一点だけを取り出したサイコドラマを作ってみたい。時間があれば学生たちの課題提出の際に自分のリミックスも出して見せたいのだが、はたして書く時間はあるだろうか。キビしい……
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